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モグラ男(モールマン)の正体とは?ニューヨーク地下の都市伝説を実話・創作で徹底整理

ニューヨークのマンホールから深夜、防水スーツにヘッドライト姿の集団が出入りする――そんな監視カメラ映像が2026年5月に拡散し、SNSでは「都市伝説の“モールマン(モグラ男)”が現実に現れた」と話題になった。だが結論から言うと、この一件は都市伝説そのものの実在証明ではない。1970年代からニューヨークに伝わる「地下の住人」の伝承と、今回の目撃事件は別の出来事であり、地元警察は「貴金属探しのトレジャーハンターではないか」と推測している。本記事では、モグラ男(モールマン)という都市伝説の初出と広がり、ノンフィクションとして話題になった書籍『モグラびと』の信頼性論争、そして2026年の目撃騒動までを、実話とされる部分と創作・未確認の部分を分けて整理する。

目次

モグラ男(モールマン)とは何か――都市伝説としてのあらすじ

「モールマン(Mole Man)」は、1970年代ごろからニューヨークで語られてきた都市伝説上の存在で、日本では「モグラ男」とも訳される。伝承の基本形は「深夜、マンホールの中から人影が現れることがある。目を合わせてはいけない。好奇心から後を追うと地下へ連れ去られ、二度と地上に戻れない」というものだ。姿形の描写は語り手によって揺れがあり、単なる浮浪者的な人物として語られる版もあれば、地下に長期間潜んで人間離れした姿になったという怪異的な版もある。この「見てはいけない・追ってはいけない」という禁忌構造は、口裂け女や八尺様など日本の都市伝説にも共通する典型的なパターンで、モールマン単体の特異な創作というより、都市の暗渠・地下空間に対する漠然とした恐怖が形を取ったものと考えられる。

初出・元ネタ――ホームレス問題が土台になった伝承

この都市伝説の背景には、実際にあった社会問題がある。1970〜80年代のニューヨークでは住宅難とホームレス問題が深刻化し、廃止された地下鉄トンネルや排水路に身を寄せる人々が現れた。特に1980年にアムトラックがリバーサイド・トンネルを閉鎖した際には、少なくとも50人が同トンネル内に簡易な住居(シャンティタウン)を築いて生活していたことが記録されている。こうした実在のホームレスコミュニティの存在が「地下に人が住んでいる」という噂の土台となり、そこに脚色が加わって「モールマン」という怪異的な都市伝説に転化していったとみられる。1984年公開のB級ホラー映画『C.H.U.D.』(地下の変異怪物が人を襲う設定)も、この種の都市伝説のイメージを大衆文化に定着させた一因とされる。

「モグラびと」という言葉を広めた1993年の著書とその信頼性論争

この都市伝説を一般に強く印象づけたのが、ジャーナリストのジェニファー・トスが1993年に発表したノンフィクション『The Mole People: Life in the Tunnels Beneath New York City』(邦訳『モグラびと ニューヨーク地下生活者たち』)である。トスは当時ロサンゼルス・タイムズのインターンとして地下トンネルに潜入取材し、地下に「秩序だったコミュニティ」が存在すると報告、暴力や共食いといった衝撃的なエピソードも記した。同書は大きな話題を呼び、地下に組織化された社会があるというイメージを定着させたが、その信頼性には強い疑義が呈されている。ニューヨーク地下鉄の歴史研究家ジョセフ・ブレナンは「独自に検証できた事実は、この本の中ではすべて間違っていた」と厳しく批判しており、地理情報の誤りや検証不可能な記述の多さが指摘されている。一方で、2000年のドキュメンタリー映画『Dark Days』(フリーダム・トンネルの住人を長期取材)や人類学者テューン・フーテンの5カ月間の潜入調査、2024年の社会学者テリー・ウィリアムズによる60人超のインタビュー調査など、より実証的な記録も存在し、そこでは「秩序だった地下社会」というより、洪水や失踪、支援の届きにくさに苦しむ厳しい生活実態が描かれている。つまり「地下に人が住んでいる」こと自体は事実に近いが、「怪異的なモールマン」や「組織化された地下都市」という部分は誇張・創作の領域が大きいというのが実情だ。

2026年5月の目撃騒動――「都市伝説の実在化」ではなく未確認の集団

2026年5月、ニューヨーク・ブルックリンやクイーンズのアストリア地区で、監視カメラに防水スーツとヘッドライトを装備した男性数名がマンホールから出入りする様子が写り、SNS上で拡散した。報じられている範囲では、5月5日午前2時過ぎにアストリア区で、5月29日未明にはベッドフォード・アベニューとリンチ・ストリートの交差点付近で目撃され、シャベルやアルミ製のトレーを持った人物が約3時間地下に滞在していたとされる。ニューヨーク市警はこれを都市伝説の怪異ではなく、下水道に流れ込んだ指輪やネックレスなどの貴金属を探す「トレジャーハンター」ではないかと推測しているという(NY Post等の報道ベース)。つまりこの騒動は、モールマン伝説の裏付けというより、伝説と混同されやすい形で拡散した現代の未確認情報であり、集団の正体・目的について公式に確定した発表があるわけではない。「都市伝説が現実になった」という見出しの多くはセンセーショナルな切り取りであり、実話として断定できる材料は現時点でない点には注意が必要だ。

正体をめぐる説――実話なのか、創作なのか

モグラ男(モールマン)の「正体」について語られる説は、大きく3つに整理できる。第一に、実際に地下トンネルで生活するホームレスの人々を、噂が誇張・怪異化したという「実在の社会問題の伝説化」説。これはトスの著書やその後の実証調査からも裏付けが取りやすい部分である。第二に、都市の地下空間そのものへの恐怖心理が生んだ「未知の場所への不安の擬人化」という民俗学的な解釈。マンホールの奥に何があるか分からないという感覚が、姿の見えない怪異のイメージを呼び込みやすい。第三に、今回のような単発の目撃情報がSNSで伝説と結びつけられて拡散する「現代における都市伝説の再生産」説。2026年5月の事件はこの典型例で、実際には目的不明の少人数の行動が、既存の「モールマン」イメージに当てはめられて語られている可能性が高い。いずれの説も一部の事実(ホームレス問題、地下トンネルの実在、今回の目撃映像)を含む一方、「怪異としてのモグラ男」を実証する一次資料は存在しない。実話として語られる部分と、伝承・憶測として広がった部分を分けて捉える必要がある。

類似の都市伝説・派生――地下・トンネル系怪異との共通点

「見知らぬ地下住人」というモチーフは世界各地の都市伝説に共通する型で、日本にも通じる要素がある。たとえば「きさらぎ駅」は現実に存在しない駅に迷い込む話で、日常空間の裏に異界が接続しているという構造がモールマン伝説と共通する。またロンドンやパリの地下鉄・下水道にも「地下の住人」を語る類話があり、都市化が進んだ大都市ほど「地下空間=見えない他者が住む場所」という不安が伝説化しやすい傾向がある。モールマンはこの「地下×異界×禁忌(見てはいけない)」という型のアメリカ版と位置づけられる。

Q&A:モグラ男についてよくある疑問

Q. モグラ男(モールマン)は実在するのですか?
A. 「怪異としてのモールマン」の実在を示す一次資料はない。ただし、ニューヨークの地下トンネルに実際に住むホームレスの人々は存在し、これが伝説の土台になったとみられている。

Q. 2026年5月に話題になった集団の正体は分かっているのですか?
A. 報道の範囲では確定していない。ニューヨーク市警は貴金属を探すトレジャーハンターの可能性を挙げているが、公式に身元や目的が特定されたという情報は確認できていない。

Q. 『モグラびと』という本はどこまで信用できますか?
A. 地下に人が住んでいるという大枠の事実は他の取材でも裏付けられているが、著者ジェニファー・トスの具体的な記述(組織化された地下社会、暴力・共食いなどのエピソード)は独立検証で誤りが多いと専門家から指摘されており、そのまま実話として扱うことはできない。

Q. 映画『C.H.U.D.』はこの都市伝説が元になっていますか?
A. モールマン伝説やニューヨークの地下生活者のイメージが、1984年のホラー映画『C.H.U.D.』(地下の変異生物が人を襲う設定)の着想の一つになったとされ、逆に同作が伝説のイメージ定着に影響したとも言われる。ただし直接の原作関係ではない。

まとめ――分かっていることと、まだ分からないこと

モグラ男(モールマン)は、1970年代のニューヨークで語られ始めた「地下に住む謎の人物」の都市伝説であり、その背景には実際に地下トンネルに暮らすホームレスの人々の存在があった。1993年の著書『モグラびと』はこのイメージを世界的に広めたが、内容の多くは検証不可能・不正確との指摘があり、実話としてそのまま受け取ることはできない。2026年5月にニューヨークで拡散した監視カメラ映像も、都市伝説の実在を証明するものではなく、目的不明の少人数の行動を伝説のイメージに重ねて語られている段階にとどまる。「地下に人知れず住む人々がいる」という部分は事実に近いが、「怪異としてのモグラ男」は伝承・創作の色合いが強い、という線引きを持って捉えるのが妥当だろう。

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